新着情報

【プレスリリース】第2回 コスト高騰緊急アンケート結果を公表しました。

「価格転嫁」のカギは「日頃の情報共有」と「具体的数値などに
基づく交渉」により「コスト高騰の理解を得る」こと
~販売価格を値上げするも88.9%がコスト上昇分をカバーできず~

公益社団法人日本農業法人協会は、2,082先の会員を対象に「第2回農業におけるコスト高騰緊急アンケート」(2022年11月調査)を実施し、その結果をとりまとめました。
本アンケートは、5月に実施した「第1回アンケート」から6ヶ月が経過した現在の生産資材等コスト高騰の影響や価格転嫁の状況、厳しい経営環境下での自助努力の取組みなどを明らかにするため行った調査です。

<調査結果の要点>

(1) 肥料・飼料など経費は2021年10月比で「上昇」が97.2%
(2) コスト高騰を受け、「価格転嫁した」が45.0%で、前回調査より16.3ポイント上昇
(3) 販売先で「値上げした」割合が高いのは、「消費者への直接販売」など
(4) 前回調査(5月)で価格転嫁できていなかった先の30.6%が「価格転嫁」を実現
(5) 「価格転嫁できた」要因は、「交渉でコスト高騰の理解を得られた」が最多
(6) 販売価格を値上げするも、88.9%の先ではコスト上昇分をカバーできず
(7) 価格転嫁できない要因は「無条件委託販売としているため」が最多
(8) 経営維持には「15%以上~30%未満」の利益率が必要と32.8%が回答
(9) 適正な販売価格の形成に向け、「公的な制度や仕組みが必要」が77.4%
(10) 今後、周辺農家で見込まれる動きは「離農者(廃業又は倒産)の増加」が最多
 (11)  食料の安定供給に向け、「需要に応じた生産」に90.9%が意欲的も、
       その推進には「労働力不足」が課題
 (12)  円安や世界的人口増などを受け、「輸出」に59.1%が前向き姿勢

調査名 調査期間 調査

方法

調査

対象先数

有効

回答数

有効

回答率

第2回 農業における
コスト高騰緊急アンケート
2022年11月19日~
2022年12月2日
WEB又はFAX 2,082 460 22.1%

「第2回 農業におけるコスト高騰緊急アンケート」ダウンロード(PDF:715KB)

<調査結果> ※ 詳細は上記資料をご確認ください。

1 肥料・飼料など経費は2021年10月比で「上昇」が97.2%

  • 2021年10月と比べ、経費が「上昇した」と97.2%が回答し、ほとんどの先で昨年よりも一層、コスト高騰の影響を受けていることが明らかになりました。
  • このうち、「1.3倍以上~1.5倍未満」が33.5%と最も多く、次いで「1.1倍以上~1.3倍未満」が30.9%でした。なお、「1.5倍以上上昇」が30.0%を占め、依然、厳しい経営環境であることが浮き彫りになりました。
  • 業種別では、畜産で「1.5倍以上上昇」が54.0%を占めており、他の業種と比べ厳しい状況にあることが分かりました。

2 コスト高騰を受け「価格転嫁した」が45.0%で、前回調査より16.3ポイント上昇

  • コスト高騰に伴い「価格転嫁した」と45.0%が回答。5月に実施した前回の調査から16.3ポイント上昇(28.7%→45.0%)しました。
  • 一方、「改定していない(値上げできていない)」及び「値下げした」が55.0%で、過半はコスト高騰下において、販売価格にコスト上昇分を反映できていないことも分かりました。
  • 業種別で「値上げ(価格転嫁)した」割合が多かったのは、「果樹」の23.1%、「畜産」の21.8%です。「果樹」は主な販売 先が「消費者への直接販売」が多く、コスト高騰の状況を見ながら直接、消費者に生産現場の状況を訴えて、「自社の裁量で販売価格を決定できた」ことが背景にあります。また、畜産では、「値上げ交渉において、客観的な経営上の数値やその資料を用いて具体的に交渉」したことで、農業の生産現場における厳しい現状など「コスト高騰の理解を得られ」、値上げに結び付いたという先が多いことが分かりました。
  • 一方、「改定していない(値上げできなかった)」は、販売価格が需給バランスに大きく影響を受けやすい「野菜」が59.9%、「稲作」が58.4%と、他の業種と比べて高い割合になっています。

3 販売先別では「消費者への直接販売」などで「値上げした」割合が高い

  • 販売先別に価格転嫁の状況をみると、「値上げ(価格転嫁)した」割合が高いのは、自社の裁量で販売価格を決めることがで きる「消費者への直接販売」が25.5%と最も高く、次いで、関係が密接な業務提携会社やグループ間販売など価格交渉がしやすい「その他」が25.0%となっています。
  • 一方、「改定していない(値上げできなかった)」は「農協系統」が70.0%と最も高い割合でした。

4 前回調査で価格転嫁できていなかった先の30.6%が「価格転嫁」を実現

  • 前回5月の調査で、コスト高騰に伴う「価格転嫁」できなかったと回答した先(147先)のうち、30.6%が今回の調査では「価格転嫁した」と回答しています。
  • 「価格転嫁した」割合が最も高い業種は、「麦類・穀類・芋類・工芸」で55.6%、次いで「果樹」の50.0%となっています。
  • また、販売先別でみると、「価格転嫁した」のは、「消費者への直接販売」で50.0%と最も多く、次いで「小売業者」で40.7%となっています。
  • これら「価格転嫁」できた先においては、生産現場のコスト高騰による厳しい状況などを「日頃から交渉相手と情報を密に共有」する努力をし、販売価格にコスト上昇分を上乗せできないと安定的な生産及び経営が継続できないなどを説明し、「取引先(出荷先)との交渉によりコスト高騰の理解を得られた」先が多いことが特徴的であることが分かりました。また、昨今のコスト高騰についてマスコミの報道などで取引先や消費者にも理解が深まり、値上げしやすい風潮があることも価格転嫁の後押しをしています。

5 「価格転嫁できた」要因は、「交渉でコスト高騰の理解を得られた」が最多

  • 「価格転嫁」できた先におけるその要因は、「取引先との交渉によりコスト高騰の理解を得られた」が最多(142先)でした。また、「消費者への直接販売のため、自社の裁量で販売価格を決めることができたため」(44先)が続きます。
  • また、価格転嫁に向け取組んでいる努力としては、「日頃から交渉相手と情報を密に共有している」が最も多く(101先)、次いで「値上げ交渉時に客観的な数値や資料により具体的に交渉している」(94先)が続きます。具体的には、肥料や飼料の取引明細書などを用いて、生産資材の購入価格の上昇率などを説明し、価格に関する交渉に臨んでいます。
  • これらから、農業生産現場におけるコスト高騰の状況やコスト削減に向けた経営努力、さらには産地の状況や業界動向のほか、販売先の事業展開に有益な情報を綿密にかつ客観的・具体的に伝える努力をすることが価格転嫁のカギであることが浮き彫りになりました。

6 販売価格を値上げするも、「10%未満」が85.9%で、コスト上昇分をカバーできていない先は88.9%

  • 販売価格を値上げした先のうち、値上げ率は「5%以上~10%未満」が50.2%と最も多く、これを含め、「10%未満」と回答した先は85.9%でした。
  • また、販売価格を値上げするもコスト上昇分のカバー率が「0%~5%未満」と回答した先が24.6%と最も多く、これを含め、カバー率「10%未満」の先は40.1%でした。
  • さらにコスト上昇分をカバーできていない先は88.9%となっており、約9割の先では、販売価格の値上げが不十分であることが明らかになりました。

7 価格転嫁できない要因は「無条件委託販売としているため」が最多

  • 価格転嫁できなかった先において、その理由で最も多かったのが「無条件委託販売としているため」(74先)で、生産者が売値や出荷時期などの条件を出荷先に委ねているため、生産者の意向を十分に価格に反映できていないと考えられます。
  • 次に「年間契約(事前契約)であり、期中改定ができない」(60先)と続き、「その他」として、「市場価格連動のため」や「すでに一度値上げしており、再度値上げがしづらいため」といった事例もありました。
  • また、値上げを受け入れないと感じる先は、「集出荷段階」(63先)が最多となりました。

8 価格改定していない期間は「3年間」が33.2%で最多

  • 価格転嫁できていない期間は、「3年前」からが33.2%と最多で、「概ね1年前」からが28.5%と続きます。
  • コストが高止まりする中において、価格転嫁できない期間が長期化することで、経営の弱体化が懸念されます。

9 価格転嫁できていない先の15.0%が「販売先を変更したい」

  • 価格転嫁できていない先のうち、「変更したくない(現状のまま)」は63.6%で、「販売先を変更したい」の15.0%を大きく上回っています。
  • 「変更したい」と回答した先のうち、変更希望先として最も多かったのは「農協以外の集出荷団体」で22.2%でした。

10 農産物の販売において、コスト高騰下でも36.8%が「黒字」

  • コスト高騰下でも、農産物の販売において「黒字」と回答した先は36.8%でした。利益は、「0%超~5%未満」が21.1%と最多であり、次いで、「5%以上~10%未満」が9.1%と続きます。
  • 一方で、「赤字」と回答したのは48.5%で、これに「利益0%」を含めると、58.7%が利益を確保できていない状況です。

 

11 経営維持に理想の利益率は「15%以上~30%未満」が32.8%と最多

  • 経営を安定的に維持し、国民への安定的な食料供給の責めを果たしていくのに理想の利益率は「15%以上~30%未満」が32.8%と最多でした。
  • 次いで、「30%以上~50%未満」が26.5%と続き、現在の利益率の状況と理想が乖離していることが分かります。

12 今後の価格改定の意向は89.6%が「値上げしたい」

  • 今後の価格改定の意向は、89.6%が「値上げしたい」という結果でした。
  • しかし、このうち35.7%は「値上げしたいが困難」という回答であり、実際に値上げすることは簡単ではない状況にあることが分かりました。

13 経営を維持する適正な販売価格の形成に向け「公的な制度や仕組みが必要」は77.4%

  • 経営を維持できる適正な販売価格の形成に向け、「公的な制度や仕組み」が「必要」と回答したのは77.4%でした。
  • 現在、コスト高騰が継続し、価格転嫁できてもコスト上昇分を十分にカバーできていない状況下では、公的な制度や仕組みを求める意見が多いことが分かりました。

14 今後、周辺農家で見込まれる動きは「離農者(廃業又は倒産)の増加」が最多

  • コスト高騰が継続するなかで、今後、数年(2~3年)で周辺農家の動きとして見込まれるのは、「離農者(廃業又は倒産)の増加」が最多(335先)で、次いで、「荒廃農地が増加する」という回答(184先)が続きます。
  • コスト高騰などによる経営の悪化により、周辺農家の離農や荒廃農地の増加を見込む回答が多く、食料の安定供給に向け、農業地域の維持・発展の取組みを確実にしていくことが“待ったなし”の状態と言えます。

15 生産資材の安定的な入手に向け、肥料・飼料などの「原料調達国の複数国化」を求める意見が多い

  • 国産資材の活用状況は、「一部の資材が国産(20%以上~50%未満)」が29.1%で最多でした。また、「大半の資材が国産(80%以上)」は28.5%で、当協会の会員のうち、「国産資材が50%以上」の先は54.2%と過半数を超えています。
  • 生産資材の入手が不安定になるなか、その安定的な入手に向けた取組みとして、「調達先を変更又は増やした」が最も多く、「肥料・飼料の配合や使用量を変更」が続きます。
  • これに関連し、生産資材の安定的な入手に向けた課題として、「肥料・飼料などの原料調達国の複数国化(代替国の複数確保)」を求める意見が最も多く、次いで「国内の未利用資源活用(資源循環)に向けた技術開発」を期待する声が続きます。

16 食料の安定供給に向け「需要に応じた生産」には90.9%が意欲的も、「労働力不足」が課題

  • 海外からの農産物の輸入に支障が出ているなかで、基本的に一年一作が特徴である農業においても、国内での食料の安定供給に向け、マーケットインの考え方に基づく「利益が見込まれる需要のある農産物の生産」に対し、90.9%が意欲的な姿勢を示しています。このうち、29.4%は「新たな品目であっても、生産を始める(作物転換を含む)」という非常に積極的な回答です。
  • 一方で、対応したいが「課題があり対応できない」と回答した先のうち、その要因として最も多かったのは、「労働力不足」でした。需要に応じた生産を一層推進していくためには、労働力の確保など生産面における環境整備がカギになると考えられます。

17 円安や世界的な人口増などにより、需要の高い「輸出」に59.1%が前向き姿勢

  • 円安や世界的な人口の増加になどにより、世界で高まる食料需要に応える「輸出」について、「既存の輸出事業の拡大」や「新たな輸出事業の開始」、さらには「輸出に向けた前向きな検討」など積極的な意向先は53.2%を占めました。
  • また、これに「現状の取引を維持」の5.9%を含めると、「輸出」に意欲的な先は59.1%と約6割に迫り、輸出に関心が高いことが伺えます。

 

(参考)第1回農業におけるコスト高騰緊急アンケートは以下より

【プレスリリース】コスト高騰緊急アンケート結果を公表しました。

以上

(担当:総務政策課政策担当 岩﨑・古澤 TEL:03-6268-9500 掲載日:令和4年12月16日(金))