当協会について

協会の歴史

日本農業法人協会の歴史について

協会の歴史


1.はじめに

平成11年7月12日、参議院本会議で可決成立した「食料・農業・農村基本法」の第22条に、「農業経営の法人化の推進」が明記され、この基本法制定の ベースとなっている「農政改革大綱」(平成10年12月8日、省議決定)においても「農業経営の法人化の推進と法人経営の活性化」が農業政策の柱の1つと して打ち出されており、最近の農業情勢を背景にして、農業政策における農業法人に対する位置付けと関心が高まっています。

有限会社や農事組合法人など法人形態で農業を営む“農業法人”は全国に13,186(平成12年2月現在)。このうち、農地の権利を取得して農業経営を 行っている農業生産法人数は6,213(平成13年1月現在)。農家戸数全体が激減する中で、農業生産法人数は平成5年に比べ1.5倍と増えています。

また、命の産業である農業経営の確立・発展と農業・農業法人のステータス向上をめざし、6月28日、日本農業法人協会が発足しました。

全国の販売農家233万戸に比較すれば、農業法人・農業生産法人はごくごく少数ですが、大きな変革の時代のまっただ中にある日本農業・農村がめざす方向の 1つとして、農業法人が注目されています。この機会に、昭和30年代初めからの農業経営の法人化の歴史、農業法人の現状・期待と展開方向、そして発足した 日本農業法人協会についてご紹介します。

2.農業法人、農業生産法人の歴史と農業政策上の位置づけ

(1)昭和30年代前半〜平成4年(第1次「法人化」の時代)
1. 昭和32年、徳島県勝浦町のミカン農家による有限会社設立を契機に、農業法人の法制化運動が起こり、昭和37年、農地法の改正により、“農業経営を行うた めに農地を取得できる法人”の仕組みとして「農業生産法人制度」が発足しました。
2. その後、「農業生産法人制度」は、45年、55年、平成元年に、事業、構成員等の要件改正が行われました。しかしながら、この間、絶対数が少ないこともあ り、農業生産法人あるいは農業法人が、農業政策の前面に出ることはありませんでした。

(2)平成5年〜平成11年(第2次「法人化」の時代)

1. 農業法人の歴史に新たな1ページが開かれたのは、平成4年6月、農林水産省が公表した「新しい食料・農業・農村政策の基本方向」(新政策)と言えます。 「新政策」においては、「経営形態の選択肢の拡大の一環として、農業経営の法人化を推進する」とし、農業政策として初めて、法人化の推進を打ち出したもの で、農業法人の歴史にとって、大きな転機となっています。
2. この「新政策」を踏まえ、平成5年、事業要件に製造加工等を加えるとともに、構成員に一部消費者や企業、農協を加えるなどの要件緩和が行われました。ま た、同年には、設立相談等の農業法人の設立促進や研修等を行うため、都道府県農業会議等の農業団体を窓口に、「農業法人育成支援事業」が発足しました。

(3)平成11年以降(最近の「法人化」をめぐる動き)

1. 平成11年7月16日、参議院本会議で可決・成立した「食料・農業・農村基本法」の第22条に、「農業経営の法人化の推進」が明記されました。
2. 今後の農業政策の基本となる「食料・農業・農村基本計画」(平成12年3月15日公表)でも、「専ら農業を営む者等による農業経営の展開」として、「農業 経営の法人化の推進」が盛り込まれ、農業政策の柱の1つとして位置付けられています。
3. 平成13年3月1日、農地法の一部改正法が施行され、譲渡制限付き株式会社の導入をはじめ、経営形態、構成員、事業、業務執行役員要件の見直しが行われ、農業生産法人の活性化のための法律改正が行われました。
4. 平成13年5月31日に公表された「武部大臣『食料の安定供給と美しい国づくりに向けて』(私案)」においても、農業の構造改革を推進するとし、「意欲と 能力のある経営体(育成すべき農業経営)を明確化した上で、これら経営体が創意工夫を生かした農業経営を展開できるよう、家族経営の活性化や農業経営の法 人化等を推進する」とし、産業・経営政策としての政策と、農村地域政策としての政策を区分けし、対象も明確化する方向を打ち出しました。
5. 平成13年8月30日、「農業構造改革推進のための経営政策」(いわゆる「経営政策大綱」を公表。育成すべき農業経営の明確化、施策の集中、農業経営の法人化の推進等を明確化しました。
6. 平成14年4月11日に公表された「食と農の再生プラン」においても、「農業の構造改革を加速化」するとし、(1)経営の法人化で拓く構造改革、(2)米 政策の大転換、(3)セーフティネットの創設(経営所得安定対策)、(4)新たな土地利用の枠組み―を提起しました。また、「ブランド日本」を提唱しまし た。

(4)農業法人数の増加傾向
平成13年1月1日現在の農業生産法人数は6,213法人であり、うち有限会社4,628、農事組合法人1,559、合資・合名会社26となっており、その数は平成5年に比べ1.5倍に増加しています。

また、農地の権利を必要としない畜産、施設園芸、作業受託会社等を加えた、いわゆる“農業法人”の数は、平成12年2月現在の法人農家7,914、農家以外の農業事業体5,272で、合計13,186法人となっています。

3.農業法人の組織活動と社団法人化

一方、農業法人の組織活動については、都道府県農業団体における「農業法人育成支援事業」等を通じ て、組織化の機運が盛り上がり、平成6年4月、秋田県下で全国初の農業法人組織(秋田県農業法人協会)が設立されて以降、現在までに44都道府県に農業法人組織が設立され、研修セミナーや情報交換等の自主的な活動に取り組んでいます。

全国段階においては、平成8年8月8日、「全国農業法人協会」が設立され、農業法人の全国 ネットワークとしての活動を進めてきましたが、「勉強会だけでなく、社会的に認知された団体として発展すべき」との議論を受け、全国農業法人協会の下に、 社団法人化へ向けた検討会を設置し、検討を進めてきました。主な検討経過は下記のとおりです。

1. 平成10年2月19日、役員会等で「組織整備等検討会」の設置を決定
・4月23日 [第1回組織整備等検討会]
・5月28日 [平成10年度通常代議員総会]で検討方向を了承
・7月8日 [第2回組織整備等検討会]
・9月3、4日 [第3回組織整備等検討会]
・10月19日 [第4回組織整備等検討会](検討案のとりまとめ)

2. 平成10年11月4日、役員会等で検討会報告を確認

3. 平成11年2月19日、役員会・都道府県農業法人組織代表者会議
・5月28日(金)の設立総会を決定
・「組織」「政策」「事業」「設立」の4プロジェクトの設置を決定

4. 社団法人化プロジェクトの開催
・3月25日(木)[組織プロジェクト]
・3月30日(火)[政策プロジェクト]
・4月16日(金)[事業プロジェクト]
・4月23日(金)[設立プロジェクト]

5. 平成11年5月11日、役員会・都道府県農業法人組織代表者会議
・4プロジェクトの検討結果を了承
・設立総会に提出する設立趣意書、定款、事業計画等案を了承・決定

上記のような検討経過を踏まえ、平成11年5月28日、東京・東條会館において、「日本農業法人協会設立総会」を開催し、設立趣旨書、定款等を決 定するとともに、民法34条にもとづく社団法人の設立許可申請を行うことが満場一致で決議されました。
平成11年6月11日に許可申請を行い、6月28日、設立許可がなされました。

設立総会時に把握した会員数は、1,191会員でしたが、総会後の加入申込を含め、設立当初の会員見込み数は、1,213会員でした(平成14年4月現在、1,525会員)。

4.日本農業法人協会の概要

先に述べたように、日本農業法人協会の前身となっているのは、平成8年8月8日、都道府県段階での農業法人組織の会員をベースに、任意組織として 設立された「全国農業法人協会」です。平成8年の設立当初から「単なる勉強会なら要らない。社会的に認知される組織が必要」との議論があり、研修セミナー や合同会社説明会など農業法人の任意の全国ネットワークとしての事業活動を進める一方で、新しい時代を担う農業法人組織のあり方について、1年半にわたる 内部検討・議論を重ねてきました。

市場経済や国際化などわが国経済社会は大きな変革期にあり、農業もけっして埒外ではない。多くの制度や仕組みがその効力を失いつつあるなかで、新しい時代 を担う組織のあり方はいかにあるべきか。一年余にわたる検討の結果、農業法人とその組織が法律的・社会的な認知を得るための手法として民法34条にもとづ き農林水産大臣がその社会的役割と存在を許可する社団法人を選択したのです。

単に組織体を作るのなら、株式会社でも事業協同組合でも選択肢はあるのですが、農業・農業法人の地位向上、農業経営者としてのステータス向上が一つの目的であることから、法的・社会的な存在である社団法人を選択したのです。

では何をするのか。定款の事業には、(1)農業法人に関する経営情報の収集・提供及び調査・研究、(2)調査・研究等を踏まえた農業経営政策等 に関する提言、(3)農業法人の経営改善に関する研修及び教育、(4)農業・農業法人の人材確保及び育成、(5)一般国民に対する啓発・普及――の五本柱 を掲げています。

特に、会員(農業法人)の実態や意見を国政や一般国民に提案・提言する活動が中心に置かれています。これまでとかく少数派であるが故に、発言の場も少な く、そのノウハウや意見を提言・提案する機会がなかったことから、社団法人という立場から、提案・提言していこうというものです。もちろん発言・提案には 責任もともなうことになります。また、社団法人という法的人格を持つことによって、提案し実現した政策をみずから事業主体として実践していくことも視野に 入れています。

また、消費者や他産業等とも積極的に連携・提携して、農業法人の情報を他産業等に発信すると同時に、他産業からの情報を会員(農業法人)へ提供する活動に も取り組みこととしています。本協会では現在、会員の皆さんのFAX番号を登録し、瞬時に情報をFAXできる、「耳よりFAX情報」の仕組みがあります。 このFAXの仕組みを利用し、さまざま情報を農業内外から相互に、しかもダイレクトにお送りしていくこととしています。

消費者や他産業等との連携の考え方は、役員構成にも特色が表れています。18人の理事の半分、9人は農業法人以外、つまり会員外の理事です。消費者や他産業とも積極的に交流・連携していこうとの現れでもあります。

社団法人は、「人」の集まりです。本協会の唯一の「資産」は、この「人」、つまり会員である農業法人の方々です。農業法人の方々を「主人公」に、関係機 関・団体や消費者。他産業等と連携しながら、「提案・提言」と「農業経営に関する農業内外の相互の情報拠点」、これが当面の本協会の事業活動の中心となり ます。

5.新農業基本法と農業法人

今後、農業経営の法人化および農業法人に対してどのような期待が寄せられているのか。「食料・農業・農村基本法」のベースとなっている「農政改革大綱」「農政改革プログラム」(平成10年12月8日、省議決定)に、具体的な期待と政策の方向が示されています。

「戦後の農政を・・・抜本的に見直し・・・再構築する」との強い決意を打ち出した農政改革大綱・農政改革プログラムのなかに、農業法人に関する記述は多く 見受けられます。平成4年に公表された「新政策」でも指摘されていたように、農業分野における国際化、市場経済化という時代の流れは、確実に、しかもス ピードを速めて接近しつつあり、今回の「農政改革大綱」「農政改革プログラム」における農業法人への期待は、これら時代の流れの下で、農業における法人経 営が持つ機能と、まだ少ないながらも実際の農業法人の実績が評価されつつある表れと考えています。

農業法人に対する農業政策の方向の1つは、担い手の確保対策の柱として「農業経営の法人化と法人経営の活性化」が明記された点です。平年4年の「新政策」 において初めて農業政策に登場した法人化推進が、今回も担い手対策の大きな柱として明記されており、農業経営の法人化が農業政策の柱として認知され定着し つつあることを物語っています。

農業経営の法人化の利点として、(1)新規就農の受け皿、(2)農村社会の活性化、(3)経営の円滑な継承-等を掲げ、「農業経営の法人化を推進」すると していますし、合わせて、農地の権利を取得できる「農業生産法人制度」の事業要件、構成員要件、業務執行役員要件を見直すとともに、現在、有限会社、農事 組合法人、合名会社、合資会社に制限されている農業生産法人に株式会社形態を導入する方向での検討するとされました。

この農業生産法人制度の見直しについては、7月16日に検討会報告(農業生産法人制度検討会報告)が行われ、国会審議を経て、平成13年3月1日に農地法の一部改正法が施行されました。

2つ目は、新規就農の促進対策として「農業法人等の就職情報の提供等を通じ、法人等への就農を促進する」とし、農業法人の構成員や雇用者としての就農を進めるとしている点です。

現在、農業経営における雇用は約9万人にのぼり年々増加しています。労働省が平成10年10月、本協会の前身である当時の「全国農業法人協会」の会員を対 象に実施した「農業分野の常用労働者の雇用等に関するアンケート調査」では、(1)回答のあった908法人の雇用者は平均11.7人、家族労働を含めれば 13.6人、(2)平成9年度の募集者数は1,167人(910法人)、(3)応募者数は3,475人、(3)採用者数は1,583人――という結果だっ た。農業法人にとって雇用が一般化している実態とともに、910法人の雇用力が年間1,500人程度にのぼっている実態が明らかにされています。

一方で、就業規則・給与などの就業条件の整備や宿舎施設の整備など農業法人側の課題も残されており、就業条件の整備と一体的に人材募集を行う仕組みの整備 も必要となっています。また、最近では、農業法人への就職・研修を独立への足掛かりと考える若者も増えています。さまざまな農業研修の仕組みも整備されつ つありますが、農業経営を実践している現場で、農業経営者と寝食をともにしながら、農業の経営者としての哲学とノウハウを学ぶ仕組み=農業経営者養成塾= の整備も課題です。

3つ目の記述は「経営継承システムの構築」です。後継者がいないために、せっかく規模拡大した農業経営が自然消滅する例も少なくないし、農家の跡継ぎが親 の農業経営を継承するだけの時代は終わりつつあるなかで、経営体としての永続性という法人の特性を生かした経営継承のシステムが模索されるべきです。

このほかにも、今回の大綱等には、女性や高齢者の役割分担・位置付け、小中学生に対する農業体験学習、集落農業の法人化など、農業法人がその一翼を担うべき施策の展開方向が示されています。

「農政改革大綱」に示された、これら農業法人への期待や展開方向は、今後、具体的な施策として展開されることになるでしょうが、本協会としても、これらの期待に応えられるよう、農業経営の現場から施策の実現と推進を支援していきたいと考えています。

6.おわりに

今日の農業法人の特色をやや概括的に言うと、2つの特徴があります。1つは、家族労働力だけでなく、「雇用」があるということ。もう1つは、農畜産物の“生産”だけでなく、「加工、販売、交流」の事業を導入し、多角化を図っていることです。

つまり、生産という1次産業、加工という2次産業、そして販売・交流という3次産業を複合した、 「生命総合産業」あるいは「第6次産業」と表現されるような、新しい形の農業経営を実践している農業法人が増えています。善し悪しは別にして農業においても国際化と市場原理が進む中で、これら先駆的な農業法人の取り組みは、今後の農業経営の1つの方向であると考えています。

しかしながら、農業法人が社会的な期待に応えていくためには、まだ多くの解決しなければならない 課題もあります。引き続きご支援をいただきますようお願いいたします。最後に、本協会の坂本会長がかねて持論として提起している「農業法人化推進の必要 性」をご紹介させていただきます。

・ 農業・農村も「家を経営単位」とした時代から「個人を単位」とした時代を迎え、これに対応するためには、「家(相続)」継承に代わりうる「農業経営の法人化」が必要である。
・ 農業経営の継承は、「農地と経営を一体とした」継承システムの確立が重要であり、これを果たすには、「農業経営の法人化」が必要である。
・ 農村の担い手付則と急速な高齢化対応策として、「農業経営の法人化」は有効な手段である。
・ 「若者のニーズ(明確なルール)」や「女性の地位向上」に対応できる農業経営の確立を図るためには、「農業経営の法人化」が必要である。
・ わが国の農業生産力は、「集落生産機能」である。課題は、集落農業生産機能の衰退にあり、これに代わりうるシステムとして、「農業経営の法人化」が必要である。
・ 多様化した農業構造を明確にするためには「経営(専業)農業」と「自給(兼業・ホビー)農業」に政策を整理する必要があり、「経営農業」の確立には「農業経営の法人化」が有効な手段である。
・ 農業が「産業として自立」するためには、経営規模の拡大、複合化、多角化が必要。さらに、計画、生産、販売、労務管理、経営記録、分析等の業務が必要であ り、これに対応するためには、「農業経営の法人化」が有効な手段である。
・ 農業経営の規模拡大・多角化等「家族で果たしうる経営能力」の限界を越える時代が来た。
・ 農業経営基盤の整備において、その資金調達に「直接金融システム」を取り入れる時代が来る。これに対応するためには、「農業経営の法人化」が有効な手段である。

◎しかし、「農業経営の法人化」は、農業経営の確立における選択肢である。

以 上